15 Evening Star (Day 123)

 
 

その噂は、ひょんな事から俺様の耳に入った。
VivecのHlaaluで住民の皆さんと楽しくおしゃべりをしていたときだ。


Crassius Curio is quite a patron of the arts. He commissioned some artists to do a mural for him, and I heard that he has written a new play, and would like to have it performed.

あのCrassius Curioが舞台美術さんを探しているんですって。 なんでも今書いている新しいお芝居のためだそうよ。 それに、もうそろそろ上演の予定を組むらしいって聞いたわ。






この話題は激しく俺様の興味をひいた。 いやなに、別に役者デビューしたいとかそういうわけではない。 始めから説明するが、話はVivec(悪夢の)初訪問の時にさかのぼる。

それはForeign Quarterのエンチャント屋でのことだ。
売り物をアレコレ品定めしている俺様に、店主のMiun-Geiが話しかけてきた。



Did you not see him as you entered? It is that Marcel Maurard. Outside my shop he stands all day, selling ridiculous wares. Get rid of him I would like to, but the law says he is within his rights. Perhaps you might find a way?

外に変なヤツがいなかったかい? Marcel Maurardっていうのが私の店の外をウロウロしていただろう? まったく迷惑な話さ。 一日中人の店の前で何かしょうもないものを売り歩いているんだよ。 一応衛兵にも文句を言ったんだけど、ああして店の外にいる分にはヤツの自由なんだと。
イライラするったらありゃしないさ。 なんとかしてもらえないもんかね?



むーーーーーーん。 初手からしてどっちもどっちみたいな話だが、とにかくMarcel Marardにも話を聞きに店を出た。 確かに店のすぐ前に立っている男がいる。

お〜い、そこの売り子さん。 そんなところで何やってんの。
あそこの店の主人がかな〜りイヤがってるんだけどなぁ。



I am an actor! Or at least I hope to be. I am the poor player who struts and frets for a while on a stage and then has lunch. I am full of sound and furiousness! Oh, if there were but a good theater troupe in this town, I could give up selling these baubles. Oh! Woe is me!

私は俳優だよ、キミ。 いや、自分では少なくともそう思っているんだがね。 私にだって成功した時期はあったんだよ。 自分の仕事を誇りに思っていたし、食べていくこともできた。 今だってなにも望んでこんなところに突っ立っているわけじゃないんだ。 自分で自分に腹が立ってしょうがないよ。 ああ、この街に私を雇ってくれるすばらしい劇団は無いものだろうか。 そうすればこんなガラクタ売りで身を立てる必要もないだろうに。 おぉ、なんたる悲哀が私を包むのだろうか。








はーーーーーーーーーーーーーーー。

多少芝居がかったMarardさんの言い分を聞いた後、俺様はどうしようかとちょっと考えた。
斬り殺しちゃえ、という選択肢も無いではないが、「変な男がうろついている店(の前)」と、「変な男が惨殺死体で発見された店(の前)」というのは同じくらい商売にさしさわるような気がしたのだ。

一応やんわりと場所を移動することも進めてみたが、ここが一番商売に良い場所だとのこと。

まぁ、移動したとしてもどうせまた移動先で同じくらいイヤがられることうけあいだ。
それに仕事がみつからないとは、これまたツラい話である。
Miun-Geiさんには悪いが、ここは景気が良くなる(?)まで我慢してもらうことにしよう。

そう思った俺様はMarardさんをほったらかしておくことに決め、Miun-Geiさんの店には戻らずに先を急いだのである。 

で、今冒頭の話を耳にしたのだ。 これは聞き捨てならないのである。
早速そのCrassius Curioに話を聞こうとついでに聞いた住所へと向かう。
専門の書き割り美術を探すくらいだ、食い詰め役者の一人くらい雇う余裕があるはずだ。

もしかしたら

黒鳥の湖


みたいな出し物かもしれないが、それはそれで新しい芸風が開けることだろう。
もちろん俺様はゼッタイ見たくないが。






A company of players, yes! I would love to be able to form a company to put on my new play. But there are so few in the area that are willing to act, even for a good price. Of course, I need an actor with wit, grace, charm, and a firm...oh, never mind. You wouldn't be a bad choice, muffin, but you seem to have other matters to attend to. If you see someone else who fits the bill, send them to Uncle Crassius!

新しい演目についてかね? もちろん役者を捜しているさ。 上演しないことには話にならないからね。 でもあまり良い役者が見つからないのだよ。 ギャラは惜しまないのになぁ。 もちろん大根では話にならないよ。 そう、こう・・・なんというか、シャベリもうまくて、魅力的で、固く・・・あ、いやなんでもない。 おや、君も悪くないねぇ。 カワイイし。 あ、いや、忙しいのなら無理強いはしないがね。 もし良さそうな人が知り合いにいるようだったら、このおじさんに会いに来るように伝えておくれ。



おおおおおおおおおおおおおおっさんモーホー?(差別用語)

俺様は4500メートルほど後ずさりたいのと首の毛がゾワ〜ンとスタンダップしてくるのを鉄の意志でこらえきって、にこやかに別れをつげた。 そのままHlaaluから走り出て隣のForeign Quarterへ向かう。

もちろんMarcel Maurardに雇い主が見つかったと告げるためだ。
きっとよろこんで駆けつけてくるに違いない。
Miun-Geiも邪魔者がいなくなるのでよろこぶだろう。忘れず教えてやらなければ。

よかったなMaurard。 もしかしたら新しい人生が開けちゃうのかも知れないが。






その時は俺様を見かけてもしらんぷりしていいぞ。
っていうかしてください。



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